2013年5月16日木曜日

セシウム137のコイン線源(9250Bq)による空間線量

本日は簡易測定器による空間線量の測定によるお話をしたいと思います。

今私の手元に、セシウム137コイン線源:0.25μCi、9250Bqがあります。
これは、米国NRC認証済の2012年に製造されたものです。





これを、当方の測定器CSK-3iで900秒と短いですが測定いたしますと、次のような結果になります。

測定時間:900秒
解析精度:3σ
重量:1000.0g(便宜上1000gで測定)
測定容器:1Lマリネリ(全量充填)(便宜上)
セシウム137:13955.3±2848.1Bq/kg(過大評価)
セシウム134:116.6±32.8Bq/kg(誤検出)
カリウム40 :<60.2Bq/kg


セシウム137が理論上は9250Bq/kgとなるのですが、過大評価となってしまいました。
これは、高濃度のものであると、結晶に当たった際に出る放射線の音が、
重なり合ってしまうことから起こってしまうようです。
ハードウェア的感度も高いNaIシンチレーション式の検出器で、
しかも結晶が3インチと大きいため、限界な部分もあります。
なお、濃度が低いと放射線の音がそれぞれはっきりと検出できますので、
濃度が低すぎず高すぎないある一定の範囲(セシウム137で、1Bq/kg~1000Bq/kg程度)であれば、
正確に測定できると考えております。




それでは、このコイン線源を簡易測定器である堀場PA-1000にて測定してみましょう。
まずは、バックグラウンドの測定。
0.097μSv/h




それでは、9250Bqのセシウム137線源を用いて実験してみます。

ケースのまま近づけた場合
0.337μSv/h






ケースから出してもっと近づけた場合
0.621μSv/h





上に載せて測定した場合
2.426μSv/h






ちょっとの距離の違いでかなり数値が変わることにお気づきでしょうか?
簡易測定器では、その瞬間瞬間にカウントした放射線を、
人体にどれだけ影響を与えるかを1時間毎に計算し直したものを、μSv/hで表しています。
堀場PA-1000は、60秒間計測したカウントを記録し、それを20秒枚に平均値を出して表示します。
近づければ近づけるほど、μSv/hの値は上がっていきますので、
大体の目安として9250Bqのセシウム137の場合、0.100~0.130μSv/hと考えております。

よく、遮蔽もせずに、簡易測定器で食品の汚染を見るなどといった話を聞きます。
上記の結果から、それが非常に難しいことが分かって頂ければ幸いです。
9250Bqあっても、1cmずれるだけで結果は全く変わりますし、
それが1kg中に散らばって9250Bq/kgとして存在する場合、
セシウムがあるのかないのか何とか分かる程度だと考えられます。
これが1/10の1000Bq/kg程度まで濃度が薄まってしまうと、
存在するのかどうか分かることすら怪しいものになります。
理論上、計算する場合、次のようになります。


=============================
9250Bqの計測値を0.130μSv/hとした場合。

(計測値-バックグラウンド)÷9250Bq×1000=1000Bqに対するμSv/h

(0.130-0.097)÷9250×1000=0.119μSv/h(1000Bq存在する場合)
=============================


=============================
全部集めて直当てして測定できるんや!という方の場合
9250Bqの計測値を2.426μSv/hとした場合。

(計測値-バックグラウンド)÷9250Bq×1000=1000Bqに対するμSv/h

(2.426-0.097)÷9250×1000=0.251μSv/h(1000Bq存在する場合)
=============================

直当て出来たとしても約0.10μSv/hの差が出る程度です。
食品中のセシウムを簡易測定器の空間線量計で測定することは、
とても難しい話だと分かって頂けると思います。



他にも、各地域の空間線量だけを見て、「ここの地域は0.05μSv/hほど他より高いから危険だ。」
などの話もよく聞きます。
詳しい研究論文等、見つけることが出来なかったのですが、これだけははっきり言えることがあります。
0.05~0.10μSv/h程度の違いのみで、空間線量計で分かる情報だけで判断することは、
あやふやすぎて怖いことではないかなと考えております。
まず、空間線量だけで安全か危険かを判断するのであれば、次のことを考えてみてください。


その地域に、昔から住んでいる人は0.05~0.10μSv/h程度空間線量が低い地域の方と比べて、
・病気発生率が高いですか?
・寿命は短いですか?



私は病気発生率が高いとは聞いたことがありませんし、
寿命も全国平均と比べて短いと聞いたこともありません。
0.05~0.10μSv/h程度高かろうが低かろうが統計上、その差は無いのではないでしょうか?
どちらかと言いますと、その地域で昔から食されている物や、日常的に行われていること等が
病気発生率や寿命の長さにかかわってくると聞いたことはあります。
なので、簡易測定器の空間線量で判断することは、できないと考えております。
ただし、目安にはなるとは思います。



ご質問等、ありましたらなんでも結構ですので、分かる範囲でお答えしたいと思います^^

4 件のコメント:

  1. AT-1320Cでも、点線源だと過大検出しますね。Cs-137/1KBq密封線源(日本アイソトープ協会)を、500ml容器で検出した場合、2Kg程度に設定すると、だいたい1KBq程度になります。
    Radi用には確か、食品の簡易測定キットがあったかと思います。
    土壌測定の場合、Radiの結果と(uSv/h)、AT-1320Cの測定結果(Bq/Kg)には、一定の誤差はありますが、ある程度の相関関係はあるように思えます。
    いずれにしても、Count Per Secondに係数を掛けて算出しているからだと思いますが。

    返信削除
    返信
    1. 木下さん
      AT機でもやはり過大検出となりますか。
      他にもアロカの機械もなると伺ったことがあります。
      やはり仕方のない部分なのかもしれないですね。

      土壌測定の件、参考になりました。
      Radiでも土壌測定であればある程度いける可能性がφ(`д´)メモメモ...

      削除
  2.  WHOでは、肺ガンのリスクはラドン濃度に比例すると言う報告が
    有ります。最初の部分を載せます。

     低線量でも、被ばくのリスクは有ると言うのが定説です。
    しかし、今は放射線の影響は分からない段階なので、まだ結論を出す時期では無いと思われます。
     出来るだけ、被ばくを避ける姿勢でいないと、いつの間にか被ばくをしていたと言う事になります。

    日本の大学の調査研究で、まだ非公開になっている物も有りますので、
    今の定説は、変わっていくと思われます。




    WHO 屋内ラドンハンドブック
    公衆衛生的大局観
    国際保健機関
    (2009 年)
    要 旨
    ヨーロッパ、北アメリカとアジアにおける屋内ラドンと肺がんに関する最近の研究は、ラ
    ドンが一般集団においてかなりの人数の肺がんの原因となっているという強力な証拠を提
    供している。関連している国の平均ラドン濃度と算出方法によると現在推定されるラドン
    に起因する肺がんの割合は3~14% の範囲である。この分析は肺がんのリスクがラドンの
    被ばくの増加に比例して増加することを示している。多くの人々が低濃度および中濃度の
    ラドンに被ばくしているので、ラドンに関係する肺がんの多くは、高い濃度によるよりも
    むしろこれらの低・中濃度の被ばくレベルがもたらすものである

    返信削除
    返信
    1. ラドン温泉、どうなんでしょうね・・・
      たまに聞かれます。

      「ラドン温泉とか、放射能泉とかいうのって大丈夫なんですか?」

      大丈夫だとは思うのですが・・・と言葉を濁してしかお答えできておりません・・・
      ヨーロッパ等の家屋には、室内のラドン濃度を下げる工夫があると聞いております。
      日本は大丈夫なのかな?とその時感じましたけど。
      実際、気になるならラドン温泉といった放射能が出てる温泉には入らない方がいいかもしれませんと
      お答えするのが限界そうですね・・・

      削除