2015年6月3日水曜日

「天然ウラン」と原子炉内で生成される「人工ウラン」の話

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「[東日本土壌ベクレル測定プロジェクトのクラウドファンディングへのご協力について] 」
http://onomichi-labo.blogspot.jp/2015/05/blog-post.html

「クラウドファンディング」(2015年6月21日まで)
https://moon-shot.org/projects/68
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今日は、ご依頼者の方から問い合わせのあったことについて、
参考になればと思い、ご紹介したいと思います。

> 天然核種なるものが、人工核種の検出に影響を及ぼしてしまうということですね。
> この場所は、○○原発より35キロのところですので、通常運転で高い煙突から排気されていた
> 微量の核種が既に降り積もって久しい状態だったとも想像出来ますよね。
> 一つ伺いたいのは、ウラン系のものは、天然核種以外には考えられないのでしょうか?
> つまり、人工核種のウラン系というものは存在しますでしょうか?
> 科学音痴なので、愚かな質問かも知れませんが、お返事いただけると嬉しいです。

参考になろうかと思われるページをご紹介しておきますね。

「どんな放射性物質(核種)があるの?」(新潟県放射線監視センター)
http://www.pref.niigata.lg.jp/houshasen/radiation_ri.html

「原子力発電のしくみと種類」(J-POWER)
http://www.jpower.co.jp/bs/field/gensiryoku/atomic/mechanism/mechanism_and_kind/

「ウラン236」(Wikiペディア)
http://www.weblio.jp/wkpja/content/%E3%82%A6%E3%83%A9%E3%83%B3236_%E3%82%A6%E3%83%A9%E3%83%B3236%E3%81%AE%E6%A6%82%E8%A6%81

「トリウム-232(232Th)」(原子力情報資料室)
http://www.cnic.jp/knowledge/2604

上記ページからまとめますと、

γ線として検出することの出来る天然核種にウラン系の核種があります。
このウラン系の核種(ビスマス214・鉛214等)は、元々地球が誕生した際には存在していた天然のウラン235ウラン238からの分裂核種となります。
では、原子炉から生成されるウラン系の核種は、「低濃縮ウラン235」約3~5%と「ウラン238」が燃料として使用されております。
○ウラン235
→中性子が当たると核分裂を起こします。核分裂を起こすと、主にセシウム137、ストロンチウム90、ヨウ素131等を生成します。
→中性子を吸収するとウラン236が生成されます。さらに中性子を吸収するとウラン237になります。

○ウラン238
中性子を吸収するとプルトニウム239となり、
→その後に中性子が当たると核分裂を起こし、主にセシウム137、ストロンチウム90、ヨウ素131等を生成します。
→その後に中性子を吸収した時は、プルトニウム240等になっていきます。

さて、原子炉内で生成され残るウラン系核種には何があるのか?
→ウラン236(人工)
→ウラン238(天然)
の1種類となります。
(ウラン237は急速に崩壊し→ネプツニウム237→ネプツニウム238→プルトニウム238となるので省略します。)
この1種類は天然には存在しておりません。
では、この人工的に生成されたウラン236はどのようになっていくのでしょうか。

○ウラン236について
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Wikiペディアからは
→「ウラン236は半減期2342万年でアルファ崩壊してトリウム232になります」
との記載も有ることから

トリウム232は天然に存在しており、トリウム系の核種(鉛212・アクチニウム228・タリウム208等)となります。
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(補足)〇天然核種のウラン238について
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「どんな放射性物質(核種)があるの?」(新潟県放射線監視センター)から
→「土壌や岩石、また海水中などに存在する。半減期が長く、地球の寿命(約45億年)とほぼ同じ。」
そのため、多少の放出では半減期が長いため原子力発電所から放出されたものかどうか判断することは難しいです。
もし、多量に放出されるようであれば原子力発電所からの放出のためなのか判断も可能かもしれませんが、
セシウム137等からの検出の方が分かりやすいと考えられます。
すぐに中性子をまた吸収してプルトニウム239になります。
その後核分裂して主にセシウム137、ストロンチウム90、ヨウ素131等になります。
(これが現在問題となっている人工核種というものですね。)
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上記の事から、結論から言いますと今回検出としましたウラン系の核種は天然のものです。

燃料として使用するウランには、天然のウラン238も多く含まれていますが、
→ウラン238の半減期は約45億年と長いため、多量に放出されなければ判断が難しい
→セシウム137等が多量に検出されなければ原子炉からのウラン238であるかどうかの判断は難しい

また、トリウム系の核種としても同じで、検出としましたものは
→ウラン236の半減期は2342万年と長いため、多量に放出されなければ判断が難しい

セシウム137の検出された濃度を考えますと、
ウラン236から生成された天然のトリウム232がどれほどの量なのか。
トリウム232自体が、半減期141億年ですので、ウラン236が多量にまき散らされていたとしても微々たる量しか増えないと推測されます。
そう考えますと、ウラン236が多量にまき散らされていた場合、セシウム137の量はもっとまき散らされています。

人工核種のウラン236は半減期2342万年でトリウム232に。
トリウム232は半減期141億年でラジウム228に、その後にトリウム228→鉛212・アクチニウム228・タリウム208、ビスマス212等。

今回の測定結果から、天然核種のトリウム系の存在も確認しておりますが、
セシウム137が今回のBq/kg量程度では、原子炉から放出されたと考えられるウラン238や、人工核種のウラン236はほとんど存在していないと考えられます。
なぜならば、
→天然核種のウラン238や人工核種のウラン236は半減期が途方もなく長い
→ウラン238やウラン236の核分裂によって生成される核種が多量に存在することを確認できなければ判断できない
→逆に、原子炉から放出されたウラン238やウラン236が存在していると判断できる場合は、セシウム137等の核種は想像を超える量が検出されると推測される

なので、原子力災害における汚染状況は、
多量に放出されるヨウ素131、セシウム137、ストロンチウム90等を見ていくこととなります。
ご参考になりましたら幸いです。

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2015年6月2日火曜日

水耕用育苗倍土(くみあい宇部倍土2号)・不明(2015年)エムシー・ファーティコム株式会社

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本日は、ご依頼のありました堆肥類の測定結果についてです。
商品名は、「水耕用育苗倍土(くみあい宇部倍土2号)」
産地は、「不明」
製造者は、「エムシー・ファーティコム株式会社」
販売者は、「全国農業協同組合連合会」

苗の倍土にされるとのことです。
確認してから育苗倍土に使用したいとのことからのご依頼でした。

(測定風景)




それでは、測定結果です。

 (判定方法:スペクトルからのピーク)
セシウム134
605keV:○
796keV:×

セシウム137
662keV:×

カリウム40
1461keV:○

[ウラン系]
鉛214
242keV、295keV、352keV:○

ビスマス214
609keV:○
1120keV:○

[トリウム系]
鉛212
239keV:○

アクチニウム228
338keV:○
911keV、965keV:○

タリウム208
583keV:○
861keV:○

この度の測定結果では

天然核種
「カリウム40」
「鉛214」(ウラン系)(微量)
「ビスマス214」(ウラン系)(微量)
「鉛212」(トリウム系)
「アクチニウム208」(トリウム系)
「タリウム228」(トリウム系)

の検出と判断いたします。

セシウム137については、662keVにピーク確認できません。
セシウム134については、605keVにピークが確認できますが、796keVにピークが確認できません。
結果として、セシウム137、セシウム134共に誤検出であり不検出と判断しました。

(まとめ)
天然核種の「カリウム40」、「鉛214」(ウラン系)(微量)、「ビスマス214」(ウラン系)(微量)、
「鉛212」(トリウム系)、「アクチニウム208」(トリウム系)、「タリウム228」(トリウム系)

の検出と判断しました。
放射性セシウムに関しては検出されるほどのものでもなく、
安心して使用することのできる「育苗培土・くみあい宇部培土」であると思われます。

食品名:水耕用育苗倍土(くみあい宇部倍土2号)
産地:不明
製造者:エムシー・ファーティコム株式会社
製造工場:エムシー・ファーティコム株式会社
販売者:全国農業協同組合連合会
生産年月:2015年
入手年月:2015年3月
賞味期限:NO DATA
ロットナンバー:NO DATA
製造所固有記号:NO DATA
測定時間:43200秒
重量:1157.4
g
測定容器:1Lマリネリ容器(全量充填)
3σ(測定精度99.7%)
セシウム137:誤検出であり不検出(<0.5Bq/kg)
セシウム134:誤検出であり不検出(<0.3Bq/kg)
カリウム40:408±87.9Bq/kg

※2015年4月26日の測定結果です。
また、放射能測定での数値は絶対値ではありません。
機器や測定環境も左右する確率的な測定ですので、あくまでも参考値としてご活用ください。
この個体(このロット)を測定した結果はその母集団の数値を保障するものでありません。
今回の測定が検出なしでも、永続的な安心を保障するものでもありません。

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2015年6月1日月曜日

土壌・島根県大田市(2015年)みんなのデータサイト土壌測定プロジェクト4-5:2地点

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「クラウドファンディング」(2015年6月21日まで)
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本日は、みんなのデータサイトの「土壌測定プロジェクト」と同条件で採取しました、土壌の測定結果についてです。
また、東日本土壌測定プロジェクトの対象となる17都県ではありませんが、同条件で採取しておりますので、
結果を比較することが可能となっております。

地点名は、
→「島根県大田市1」
→「島根県大田市2」

2013年に測定した島根県大田市のたけのこ採取地と思われる土壌です。

「たけのこ(島根県大田市):クロスチェック結果有 」
http://onomichi-labo.blogspot.jp/2013/06/blog-post_4.html

先に結果から言いますと、上記たけのこを採取した土壌の箇所ではなかった可能性が強いです。

HSF(ホットスポットファインダー)での捜索状況
(※地上5cm)

大体の箇所が「0.02~0.04μSv/h」でしたので、西日本の地域と考えた場合とても低い空間線量ですね。
広島県尾道市内は「0.10μSv/h」前後の箇所がほとんどです。

(測定風景)
1地点目


2地点目


「野帳」は次の通りです。
1地点目

2地点目

それでは、測定結果です。
(判定方法:スペクトルからのピーク)
[1地点目]
セシウム134
605keV:○
796keV:×

セシウム137
662keV:○

カリウム40
1461keV:○

[ウラン系]
鉛214
242keV、295keV、352keV:○

ビスマス214
609keV:○
1120keV:○

[トリウム系]
鉛212
239keV:○

アクチニウム228
338keV:○
911keV、965keV:○

タリウム208
583keV:○
861keV:○

この度の測定結果では

天然核種
「カリウム40」
「鉛214」(ウラン系)(微量)
「ビスマス214」(ウラン系)(微量)
「鉛212」(トリウム系)
「アクチニウム228」(トリウム系)
「タリウム208」(トリウム系)

人工核種
「セシウム137」

の検出と判断いたします。
セシウム137については、662keVにピークが確認できます。
セシウム134については、605keVにピークは確認できますが、796keVにはピークが確認できません。
結果として、
セシウム137は検出。セシウム134は誤検出であり不検出と判断しました。

(まとめ)
天然核種のカリウム40、トリウム系、微量のウラン系
人工核種のセシウム137
を検出と判断しました。

「みんなのデータサイト」に今回の土壌測定結果での検体IDは「5317」です。
http://www.minnanods.net/mrdatasoilget/mds2/5317

地点名:島根県大田市・1
調査年月:2015年5月23日
測定時間:43200秒
重量:960.4
g
測定容器:1Lマリネリ容器(全量充填)
解析精度:3σ
セシウム137:26.9±5.94Bq/kg
セシウム134:誤検出であり不検出(<0.4Bq/kg)
カリウム40:253±56.2Bq/kg


[2地点目]
セシウム134
605keV:○
796keV:×

セシウム137
662keV:○

カリウム40
1461keV:○

[ウラン系]
鉛214
242keV、295keV、352keV:○

ビスマス214
609keV:○
1120keV:○

[トリウム系]
鉛212
239keV:○

アクチニウム228
338keV:○
911keV、965keV:○

タリウム208
583keV:○
861keV:○

この度の測定結果では

天然核種
「カリウム40」
「鉛214」(ウラン系)(微量)
「ビスマス214」(ウラン系)(微量)
「鉛212」(トリウム系)
「アクチニウム228」(トリウム系)
「タリウム208」(トリウム系)

人工核種
「セシウム137」

の検出と判断いたします。
セシウム137については、662keVにピークが確認できます。
セシウム134については、605keVにピークは確認できますが、796keVにはピークが確認できません。
結果として、
セシウム137は検出。セシウム134は誤検出であり不検出と判断しました。

(まとめ)
天然核種のカリウム40、トリウム系、微量のウラン系
人工核種のセシウム137
を検出と判断しました。

「みんなのデータサイト」に今回の土壌測定結果での検体IDは「5318」です。
http://www.minnanods.net/mrdatasoilget/mds2/5318

地点名:島根県大田市・2
調査年月:2015年5月23日
測定時間:43200秒
重量:734.4
g
測定容器:1Lマリネリ容器(全量充填)
解析精度:3σ
セシウム137:12.2±3.06Bq/kg
セシウム134:誤検出であり不検出(<0.5Bq/kg)
カリウム40:463±101Bq/kg

地点1も地点2も、人工核種のセシウム137を検出と判断しております。
セシウム134はピークが見えないため不検出です。
福島第一原子力発電所の事故以前の大気圏内核実験により、日本全国どこの土壌でも
セシウム137が5~10Bq/kg程度検出されてもおかしくはないというデータもあります。
そう考えますと、今回の結果は特段なにか特異性があるというものではありません。
確かに地点1は少し高めかなという結果ではありますが、竹林ですし普通に測定して検出される可能性のある範囲の結果となっております。
ただし、測定することによってその地域について分かることも多いですので、知っていくことは大事な事であると考えております。

※2015年5月25日及び5月26日の測定結果です。
また、放射能測定での数値は絶対値ではありません。
機器や測定環境も左右する確率的な測定ですので、あくまでも参考値としてご活用ください。
この個体(このロット)を測定した結果はその母集団の数値を保障するものでありません。
今回の測定が検出なしでも、永続的な安心を保障するものでもありません。

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